上記の地図で緑色の地域は現在の生息地、赤色の地域は人間が根絶してしまったところです。
ハイイロオオカミの生息地は広く、多様です。北極圏から砂漠まで、どこでも生息していました。暑さにも寒さにも、乾燥にも、湿地でも適応可能な柔軟性をもっています。
世界の自然のなかに生息しているオオカミは、ほとんどがハイイロオオカミです。ハイイロオオカミの先祖は、アメリカ大陸で生まれ、一度ユーラシア大陸に広がって大型化し、再びアメリカ大陸に戻っていったと考えられています。アカオオカミは北米大陸で最初に生まれた古いタイプのオオカミで、ハイイロオオカミはユーラシア大陸で大型化しアメリカ大陸に戻った新しいタイプのオオカミと言われています。ニホンオオカミ、エゾオオカミも、このハイイロオオカミであることが、DNA分析によってはっきりしました。
ハイイロオオカミ (オオカミ)
食肉目 イヌ科
学 名 CANIS LUPUS(カニス・ルプス)
英 名 Gray wolf / Timber wolf / Western wolf
分布域 ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の大部分など
生息環境 森林地帯や山岳地帯、半砂漠地帯など、地域によってさまざま
体 長 100~160cm 程度
尾 長 35~52cm 程度
体 重 25~50kg 程度
ヨーロッパ中央部ではほぼ根絶されてしまいましたが、保護が始まる1970年時点で、周辺地域ではイベリア半島のポルトガル、スペイン、イタリアにはわずかに残っていました。ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、ウクライナなど東欧諸国でも絶滅していません。特にルーマニアは、チャウシェスク政権がヒグマやオオカミなどの野生動物を保護したため、1989年の民主化以降にも推定4000頭のオオカミが生息していました。
1979年、当時のEC諸国間で締結された「ベルン協定」ではオオカミも保護動物に指定されました。ベルン協定は、EUによる統合後も批准する国が増え、現在ではヨーロッパ諸国29ヶ国でこの協定に基づいた野生動物保護が行われています。その結果、周辺諸国で増えたオオカミ個体群が中央ヨーロッパに生息地を拡大し、今ではヨーロッパ大陸ほぼ全域で生息が確認されるようになっています。まだ定着が確認されていないのは、イギリス、アイルランドなどの島だけになりました。2017年にはデンマークでも200年ぶりに定着し繁殖が確認されたと報道がありました。オランダでは周辺から進入してきた個体の目撃情報が相次ぎ、数か所で定着が確認されています。
北米大陸ではもともと北極圏からメキシコまでのほぼ全域に分布していましたが、アメリカ合衆国やメキシコなど北米大陸南部では根絶させられてしまいました。
現在は、北部のカナダはロシアと同じく北極圏を領域内に含みますので、まだ多数が生息しています。アラスカも含めて6万頭から10万頭が生息すると見られています。
アメリカ合衆国では、1926年にアラスカを除く全州で根絶したことになっていますが、実はミネソタ州の北部、カナダ国境に近い地域は、湖水地帯で道路も少なく、人が入ることのできないエリアがあったので、ほんの少しの頭数、300~400頭が残存していました。1973年の絶滅危惧種法(ESA)でオオカミは絶滅危惧種に指定され、捕殺することが禁じられて、現在では五大湖に面したミネソタ州、ウィスコンシン州、ミシガン州に約5000頭が生息するほど増加しています。中西部で最大の生息数は、ミネソタ州の2300~3000頭です。
また主にワイオミング州内にあるイエローストン国立公園と隣接するモンタナ州、アイダホ州には、1995年にカナダで捕獲されて運ばれた再導入オオカミが、1500~1700頭に増えています。
この地域ではさらに拡大中です。オレゴン州にも定着して100頭を超え、さらにそこからカリフォルニア州にも進出したオオカミが大きなニュースになっていました。